2009.09.20

継続は力なり:日本に必要な人材を育てる佐々木インターナショナルアカデミー

継続は力なり:日本に必要な人材を育てる佐々木インターナショナルアカデミー

SIAの佐々木です。先月8月26日ブログに公開しました「SIA評論:65回目の敗戦記念日に思う、裸の王様」の続編第二回を本日SIA評論定期購読者以外の方にも公開します。ご意見、ご感想はSIA迄どうぞ。SIA評論定期購読ご希望の方は、SIA事務局まで連絡下さい。

090918-SIA評論:65回目の敗戦記念日に思う、裸の王様 第二回

東郷平八郎の言葉として有名な「百発百中の砲一門は百発一中の砲百門に勝る」に代表される海軍にびまん瀰漫した誤った精神論について触れ、「こういった思想が結果的に一機必殺の特攻戦術となり、軍事戦略上愚行とされる、戦力の集中使用を妨げる結果となった」と先月号で批判した。

日本海軍 400時間の証言:海軍あって国家なし
「この海軍の誤った思想は、単にもうろく耄碌した東郷平八郎だけの問題ではなく、これまで善玉とされて来た海軍にその多くの問題があった事が、初めて大衆に明らかにされたのがこの2009年8月9日のNHKスペシャル「海軍400時間の証言」であった」と評価しつつも、この番組を見ても「未だ納得のいかない数々の事例がある」と引き続き書く事をお約束した。

戦後、海軍関係者はしきりに米国駐留軍関係者に働きかけ、その幹部の多くがやがて、警察予備隊、自衛隊に職を得たのは公知の事実である。旧陸軍幹部が徹底的に公職から遠ざけられ、警察予備隊、自衛隊に職を得る事が適わなかった事実と対比して見ると実に面白い。死人に口無し、権力の座にある者は語る。有利に語る。

「海軍400時間の証言」で語られたと伝えられた内容は、「なんら自存自衛、アジアの開放について語られる事が無かった。海軍軍令部の杜撰な作戦計画。軍備、装備の作文された辻褄合わせに終始していた」であった。戦後軍令部関係者が密かに集められ「極東軍事裁判で、海軍の上層部の人間を如何にして守るかに叡智と組織力を結集させた」との証言。さらに「1933年の軍令部令改正の経緯、9年間と異常に長く軍令部総長に君臨した伏見宮博恭元帥の役割、1940年から軍令部で開催された第一委員会」について語られ、「軍令部の主たる任務は作戦立案だが、政治に走り、作戦計画が杜撰なだけでなく、開戦に備えた長期的作戦は立てられていなかった」との証言。「ミッドウェー作戦が短兵急ないい加減な作戦計画であった」と多くの関係者の証言が報じられた。しかし、肝心のミッドウェー作戦がなぜ急遽立てられたかについては今回のNHKの放送では触れられる事が無かった。元々の「海軍400時間の証言」の中に言及されていなかったのか、NHKの編集段階でカットされたのかは不明である。

歴史評価
人の記憶は実に不確かな物である。戦後35年の年月を経て、11年の時間を掛け(1980-1991年)語られ、纏められたとされる証言は貴重な物であり、関係者の熱意には敬意を表する。第二次世界大戦に大敗を喫した日本、特に日本海軍関係者がその敗因を分析するこの試みは壮挙と言ってよい。しかし、そこで語られていたのは、基本的に戦争に入った事自体の愚かさが中心であった。戦争に入った事自体を反省するのが目的であれば事は簡単である。しかし、戦わざるを得ない状態での戦略、組織運営についての言及が皆無であったのは「語られる事が無かったのか?」、あるいは「語られたが、今回報道されなかったのか」一般視聴者には解らない。

何れにしてもこの「海軍400時間の証言」番組で伝えられた多くは「軍令部の本務(海軍全体の作戦・指揮を統括)を忘れ政治に走り、ずさん杜撰な作戦計画と長期戦略作戦計画なき実態」であった。そしてNHKの報道が伝えた言葉は、要約すれば「自らの組織擁護と権益拡大のみを考えた海軍、軍令部、第一委員会」であり、「海軍エリートの無責任な行動、判断が多くの犠牲者(日本人約300万人、更に多くのアジア人)を生んだ」と結論付け、「組織の中で生活する事を余儀なくされる我々現代人もこういった組織保存、自己保存のため同様な過ちを起こす危険性を否定できず、又それを防止できる自信も私には無い」と伝え締めくく括っている。

この番組は衝撃を視聴者に与えたと思う。戦後35年経過後の今から約30年前に始まり、11年間続き、約20年前に終了した勉強会。証言者は何れも海軍中枢にあった人々である。仮に終戦時40歳としても75歳。70代、80代の人々が往時を振り返り語った物語、歴史証言である。これまで書物として一般向けに刊行された「目撃者が語る昭和史」(新人物往来社 全8巻)、その他目にしては来た者として虚しさを感じた。後知恵と言う言葉がある。この証言記録自体が後知恵であり、又番組の総括的なコメント自体、65回目の敗戦記念日を前にした現在的視点からの後知恵である。反省会、報道とは本来そういったものであり、それ自体悪い事ではない。

虚しさを感じた理由は二つある。反省会が開かれた1980年―1991年という時代背景、日本の置かれていた時代背景である。エズラ・ヴォーゲルハーバード大学教授が1979年「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という本を出版し、「戦後の日本経済高度成長に着目し、このまま推移すれば日本はやがて世界一の経済大国となる」と日本が誉めそやされた時代である。1970年代末まで戦後一貫して日本社会に対するペシミズムが幅を利かせ、日本経済についても将来についても絶えず批判的な言辞が日本に満ちていた。米国の未来学者、軍事理論家ハーマン・カーン氏が1970年に「超大国日本の挑戦」を著し21世紀は日本の世紀と述べたが、日本国内ではほとんど信ずる者が無かった時代である。その書で彼は「2000年頃に日本の国民一人当りの所得がアメリカと並び世界一のレベルに達する」と述べ、これは大幅な円の切り上げもありドルベースでは1980年代には既に達成された。(当時は余り喧伝されなかったが「軍事的にはアメリカの、経済的には中華人民共和国の影響下に置かれる」と予想したとされる。Paul Kennedyが1987年その薯、大国の興亡で1500-2000年に至る大国の経済的、軍事的興廃を鳥瞰し述べている様に、経済大国は軍事大国化、軍事大国は経済力なくしては継続できない事は歴史的事実であるので、カーン氏の本当の意図、警告が那辺にあったか?)

何れにしても1970年代後半―1990年代初頭に掛けては、ハーマン・カーン氏やエズラ・ヴォーゲル氏が示唆した様に当時は「停滞していた米国への苛立ちと反省、日本経済に対する畏怖と警戒」が米国知識で語られ始めた時期である。日本社会の意識が大きく変わった時代である。

私は「良きに付け悪しきにつけ時代も社会も、その時々の社会の共通認識に沿って短期的には動き、時には左右にぶれながら、前進後退、上昇下降運動を繰り返しながらも進んで行くものである。」と見ている。

この時期(1980-1991年)に纏められた「海軍400時間の証言」。証言終結から20年近く経た現代2009年8月の65回目の敗戦日に合わせ放映されたこの番組。その時々(1980-1991年当時)の社会の共通認識に沿って記憶が再編成され証言となり、2009年の社会の共通認識に沿って編集され放映された事になる。その過程で、どれだけ客観的に当時の記録と照合され、自らの証言記録と報道時点における時代風潮の影響を最小限とし、本当に歴史から学ぶ努力が十分に払われたか? どの様に400時間の証言が記録され、更にどの様に約3時間の番組に纏められたかは関係者の叡智と良心を信ずる他は無い。

海軍の第二次世界大戦、大東亜戦争問題
歴史を戻す。第二次世界大戦、大東亜戦争時の海軍の問題である。海軍の戦争は実質的にミッドエー戦で終わっていたのである。

1942年6月5日から7日にかけて行われたミッドウェー海戦(Battle of Midway)は当時太平洋上に展開中の日米海軍兵力を比較すれば一目瞭然、勝つべき戦いであった。しかし結果は惨敗、完敗。その損害は、米海軍は航空母艦1隻、日本海軍は主力航空母艦4隻、及び全艦載機喪失。この結果海軍はその後米海軍に圧倒され続ける事になる。時に地名が予言的響きを持つ事がある。ミッドウェーと言う小さな島が中道、折返し点となったのである。

私は、この戦いについて1960年製作の日本映画(東宝)、「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐」を片田舎の映画館で見た。後続する戦艦部隊旗艦大和艦上の三船敏郎扮する山本五十六が「航空母艦4隻からなる攻撃部隊敗北」の報に接し、戦場に向け全力進行を命じる姿を見て「このオッサン、馬鹿か」と思った。攻撃部隊が敵の攻撃に晒され全速進行を命じるのであれば最初からなぜ隊列を組んで行かぬ。小学生の頭で解る事であった。裸の王様である。しかし未だに山本五十六は名将として持て囃されている。その後海軍はこの大敗を隠蔽し、誇大戦果報告で国民、陸軍を騙し続けることになる。

更に愚かな海軍の作戦は沖縄菊水作戦、戦艦大和の特攻作戦である。戦艦大和を奉じたドラマでは、大和乗船各軍人の悲壮な奮戦が描かれている。しかし余りに違いすぎる現実があった。1945年4月7日、この作戦で日本海軍は大和を含め6隻の艦船が沈没、4隻が損傷、戦死者は3,700名を超え、負傷者も500名近くに上ったと伝えられる。米軍の損害は、わずかに艦上機40機(被撃墜10機、着艦後放棄5機、海上墜落5機、損傷20機)。撃墜されたのはわずかに10機、戦死者は14名、戦傷者は3名と伝えられている。戦艦大和で描かれるこの悲壮感は、撃墜機わずかに10機という事実を知らなければ、ある意味甘美なものである。事実、未だに日本社会の心象劇場では宇宙戦艦ヤマトとして返り咲き今に伝えられている。斯く言う私も愚かなその一人である。

一将功成萬骨枯:大将の愚は罪悪
この菊水作戦を厳しく批判した日本海軍最後の海軍大将井上成美は「もはや戦艦は飛行機の敵ではない。米軍の士気を高めるだけだ。第二艦隊の面目を言うのであれば面目の道連れになった何千もの将兵が可哀そうとは思わないのか」と軍令部次長小沢治三郎を詰問したと伝えられる。

敗戦後、敗戦時の軍令総長であった豊田副武氏を初め、海軍中枢にいた人物は誰一人として「面目のため責任を取ったり、自決した」とは聞かない。9月4日ミズリー号艦上での降伏調印式すら海軍のトップは逃げた。その海軍が戦後の極東軍事裁判では組織を挙げて海軍上級幹部A級戦犯の救命に奔走し、そのためには実戦部隊の下級兵士のB級、C級戦犯の命を犠牲にする事も厭わなかったと伝えられる。将に「一将功なって、万骨枯る」、否「一将天寿を全うし、万骨枯る」である。(佐々木 賢治)


世界にチャレンジする人、企業のサポーターSIA

世界にチャレンジする人、企業のサポーターSIA

以上ご参考です。

SIA評論定期購読(電子メール配信月間5百円より)ご希望の方は、SIA事務局まで連絡下さい。

佐々木 賢治
SIA Inc. Sasaki International Academy

国際ビジネス、翻訳、通訳、語学教育のご相談は
国際ビジネスのプロフェッショナルハウスSIA!
佐々木インターナショナルアカデミーへ!

**********************
国際ビジネス、語学のプロフェッショナルハウス
佐々木インターナショナルアカデミー
453-0015 名古屋市中村区椿町17-15
ユース丸悦ビル5階
Tel 052-452-5526 Fax 052-452-5536
siabest@sun-inet.or.jp
http://www.sasaki-international-academy.com/
★ 語学教育、翻訳・通訳、国際ビジネスはSIA ★
**********************



PHOTO

RSS2.0

login

a-blog cms