2009.10.26

091023-SIA評論:65回目の敗戦記念日に思う、裸の王様 第三回:「大本営陸海軍部発表。帝国陸海軍は今8日未明西太平洋において米英軍と戦闘状態に入れり」

SIAの佐々木です。10月24日にはブルガリアの方を招き「冷戦後の旧東欧諸国」について講演会を開催しました。国際業務のコンビにSIAでは翻訳、通訳、語学教育、人材教育、各国ビジネス情報分析支援のため各国情報の収集と分析を行なっています。

さて、本日091023-SIA評論「裸の王様」第三回を公開します。ご意見、ご感想はSIA迄どうぞ。尚、SIA評論は有料定期購読会員にメールのて配信しています。購読ご希望の方は、SIA事務局まで連絡下さい。

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091023-SIA評論:65回目の敗戦記念日に思う、裸の王様 第三回
「大本営陸海軍部発表。帝国陸海軍は今8日未明西太平洋において米英軍と戦闘状態に入れり」

間もなく68年目の日米戦争勃発の日を迎える。68年前のちょうどこの時期厳しい対米交渉が進行中であった。

1941年12月8日、「大本営陸海軍部発表。帝国陸海軍は今8日未明西太平洋において米英軍と戦闘状態に入れり」という言葉は戦後も毎年の様に当時の映像、音声で放映されている。

しかしこの言葉ばかりに注目が集まり、その際のラジオ放送が「日本政府(大日本帝国政府)は米英両国に宣戦を布告した」と伝えたか否かは歴然としない。我々は本当の意味での米英二国に対する宣戦布告文も知らないのである。よく言われている宣戦布告に関する文書とは「米英両国に対する宣戦の詔書」である。米英への宣戦布告が、少なくとも当時の多くの日本国民、政府中枢にあった関係者の心理状況としては、死中に活を求める行為であったと伝えられている。

その公式英文宣戦布告文は「日本の正義を世界に唱え、世界に人種開放、差別撤廃を唱えた英語による名文であった」であろうと思っていたが、この一連の文章を書き始めた2009年8月9日まで目にした事がなかった。1941年当時、日本を代表する英字紙ジャパンタイムズ&アドバタイザー(現在のジャパン・タイムズ)にはその全文が掲載されたであろうと想定したが、どうも見つからない。日本が世界に正義を問う歴史に残る格調高き「英文宣戦布告文」を米英両国に手交していたとしても、英米を中心とする世界メディアは全世界の世論、特にアジア、アフリカを初めとする被植民地地域の人々の共感を恐れ、報道をしなかったであろう。米英両国政府が全文を公開する事もあり得ない。しかし、日本の国内で見つからない事が実に不思議であった。

対米公式宣戦布告文書:世界に向けた正義の主張は英文81語のみ
そこで今回、SIAのスタッフに命じ日本の対米公式宣戦布告文を本格的に探させた所、米国の名門イェール大学のホームページに“Japanese Note to The United States December 7, 1941, Generally referred to as the “Fourteen Part message””(1941年12月7日米国への日本のノート、14部からなるメッセイジして一般的に言及される)と掲載されているのを発見した。その資料を見ると、このドキュメント文書は日本大使によって国務長官に1941年12月7日午後2時20分に手渡された次のような内容であると記され、頭がメモランダム(Memorandum)となっている。このホームページの文書自体には、先ず簡潔にこの文書を受取った時間的経緯と国務長官ハルがこの文書を受け取り熟読後、激しく野村大使を叱責した言葉が記載されている。この米国の文書の後にMemorandumとあり全文は2,395語、アルファベット文字数12,957字、全4章からなり第3章に5項目が記載され、第4章に7項目が記載されている。この結果14部からなるメッセイジと通称されたのであろう。

この日本の宣戦布告文中で日本の正義(アジア、東南アジアの解放)を唱え言及しているのは第4章の第4項目の第二文目、わずかに81語、399字からなる一文のみである。

これでは「後世の人々にその正義を問う」とは決して言えたものではない。対外的にはこうして始まった戦争。国内では、日本海軍の英雄として名高き山本五十六氏は一戦を交える前から周辺に「半年や一年は大いに暴れてみせるが、その先については責任を持てない」と語ったと伝えられている。戦争に反対する発言意図とは伝えられているが、やはり一軍の将としては軽率な発言である。すでに戦わずして負けている。こういった発言が広まったのは戦後の事かも知れないし、またそういった発言自体存在しなかったのかも知れないが、外部に伝わる場で、もしこういった発言を安易にしたとするならば勇猛果敢な前線指揮官としては面白い人物であるが、全軍を指揮する司令官の器ではない。将の将たるは部下に信頼を与え、いかなる事態に陥るとも、絶えず次善の策を模索し備えることである。

真珠湾攻撃の際の第三次攻撃について、山本五十六連合艦隊司令長官が「南雲はやらんだろう」と答えたと伝えられている。この発言も事実とすると実に軽率な発言である。ミッドウェーの戦いで南雲中将が完璧を期すあまり山口提督の進言を退け敵の襲撃になす術も無かった原因の一部はこの発言の呪縛による可能性がある。将たる者軽率なる人物評論は控え、人事でもって対処すべきである。

一軍の将には、世界の古今の歴史を見るに人を感動させる雄弁と沈黙、決断が問われる。こう見ると日本海軍の英雄は「裸の王様」となり、その伝説に酔いしれた国民は一体何を理解し、見て来たのか? 洋の東西、時代を問わず、「勝てば官軍、負ければ賊軍」。その厳しさを学ぶことも重要である。

人類歴史の足跡と貢献
しかし、「万事塞翁が馬」。日本の第二次世界大戦における評価については欠落がある。戦後の被植民地地域諸国の独立である。日本は第一次世界大戦後のベルサイユ条約締結交渉の際、国際連盟憲章への人種平等の明記を主張した。米英両国の反対でその会議に列席した多数派の支持を得ながら陽の目を見なかった。日本が一部なりとはいえ加担し戦勝した戦後処理で実現しなかったこの理念、アジア、アフリカ、有色人種解放の理念は、奇しくも日本の敗戦後瞬く間にアジア、アフリカに拡がり、世界の知識人を動かし、欧米の植民地主義に苦しんだアジア、アフリカの人々を解放し、大英帝国を実質的に崩壊させ、日本の戦後の経済成長の原動力となり、やがてそのウネリはアメリカ大陸にも及びキング牧師の公民権運動を下支えし、中南米諸国の非白人を助けただけではなく、遂に2009年1月20日、米国で黒人初の大統領、オバマ大統領を生むにいたった。本当の勝利者は一体誰であったのか? 人も生物、動物の一種族。生存競争を勝ち抜いて来た。人の歴史は一面戦いの歴史でもある。戦争の勝利は、一戦場の勝敗にあるのではなく戦争目的の達成にある。

敗戦後64年を経て未だ「勝ち負けにこだわった衣服」を纏った「裸の王様」が闊歩している。(2009年10月23日SIA佐々木 賢治)
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佐々木 賢治
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