2012.06.07

SIA評論は購読者限定となっていますが、2012年6月7日号については公開します。

120607-SIA評論:切ない思い、菊池直子容疑者逮捕とマスメディア報道

菊池直子容疑者(1971年12月9日-)が、6月3日逮捕された。実に切ない話である。オウムサリン事件は1995年3月20日。17年の逃亡生活を経ての逮捕。今回の警察発表(マスメディア経由)を見ると、本人もいつかこの日が来る事を覚悟していた様子である。

サリン事件は23歳の時、以降17年。逮捕時、同居していた男性、高橋寛人氏が述べたと伝えられる話では、結婚を申し出たが「オウム事件指名手配犯、菊池直子であるので、結婚できない」と述べたとの事。しかし、最後の住まいとなった部屋にはウエディングドレス姿の写真があったとの報道。

オウム真理教の一連の事件の残る唯一の逃亡者、高橋勝也被告は、かって菊池直子容疑者と同棲していたと伝えられている。菊池直子容疑者が逮捕時に同棲していた高橋寛人氏と出会うまで、同棲していたとの話である。

菊池直子被告は高橋寛人氏と同棲生活を始めて以来、高橋勝也被告には会った事がないと警察に伝え、高橋寛人氏は「菊池直子は高橋勝也にその後も会っていた」と警察に伝えているとの報道である。男女の微妙な感情による異なった発言なのか、あるいは別の要因により異なった発言となったのか?

マスメディアを通じて様々な情報が飛交っている。しかし、その中には警察関係者の意図的な情報漏洩によらねば不可能な情報も実に多い。6月7日付の日本の各新聞社に掲載された週刊誌(新潮、文春)の広告見出しを見ると、警察関係者からの情報漏洩を前提としなければ解るはずのない見出しが躍っている。その多くは、男女間の関係にまつわる内容である。

サリン事件を含む一連のオウム事件そのものとは直接関わりのない内容である。菊池直子被告のオウム入信は高校3年生、18歳になったばかりの1989年12月と伝えられる。オウムサリン事件はその5年3ヵ月後。

この女性が麻原彰晃を初めとする教団幹部に広報目的で表舞台に駆り出された存在であったと前後の状況から私は判断している。しかし、私自身の18歳当時を振り返り、今社会の一線で活躍する友人達の当時を振り返り見るにつけ、切ない思いに囚われてしまう。

しかし、犯罪は犯罪である。しかし、この事実を認めてなお、社会が守るべき節度があり、必要である。犯罪を取り扱ったコナンドイルの世界的な人気探偵小説シリーズ、シャーロック・ホームズ。その第一作、「The Study in Scarlet」の復刻版原書を読んだ時、群を抜く名作と感動した。「罪と人の裁き」を扱っている作品である。以下引用するのは、その重厚さとは比較できないが、上記作品同様に人の感情、男女の機微を扱った作品「A Scandal in Bohemia」の冒頭部分である。コナンドイルのこの2作品を目にし、想起する度に国、時代を超えた普遍的な人間性を思わざるを得ない。

因みに、余談であるが医師であり、戦史を研究し近代戦にヘルメット(鉄兜)着用を提案し、ヘルメットを世界に普及させたコナンドイルは作中の人物シャーロックホームズ同様、冷静、怜悧な理論的人物であったと思われるが、晩年彼は宗教、精神世界に強く引かれその研究に没頭し、多くの講演を行ったと伝えられている。

To Sherlock Holmes she is always THE woman. I have seldom heard him mention her under any other name. In his eyes she eclipses and predominates the whole of her sex. It was not that he felt any emotion akin to love for Irene Adler. All emotions, and that one particularly, were abhorrent to his cold, precise but admirably balanced mind. He was, I take it, the most perfect reasoning and observing machine that the world has seen, but as a lover he would have placed himself in a false position. He never spoke of the softer passions, save with a gibe and a sneer. They were admirable things for the observer--excellent for drawing the veil from men's motives and actions. But for the trained reasoner to admit such intrusions into his own delicate and finely adjusted temperament was to introduce a distracting factor which might throw a doubt upon all his mental results. Grit in a sensitive instrument, or a crack in one of his own high-power lenses, would not be more disturbing than a strong emotion in a nature such as his. And yet there was but one woman to him, and that woman was the late Irene Adler, of dubious and questionable memory.

上記英文は敢えて原文のままとします。「The Study in Scarlet」、「A Scandal in Bohemia」の二作品の和訳書名について一言。後者は「ボヘミアの醜聞」と訳され、問題はありません。前者は「緋色の研究」と一般に訳されています。この和書名で読者が何を想起するかを考えれば完全なる誤訳です。皆さんに先日紹介した奈良県観光案内ホームページの自動翻訳機による誤訳と同一水準です。和訳題名が訳文の水準を象徴しているとすれば、この本の主題、殺人犯の復讐殺人に至る情愛と人間社会の法制度の限界と神の裁き、「罪と人の裁き」について、和訳本の読者は十分には理解できないのではとの思いが込上げて来ます。(120607-SIA評論:切ない思い 佐々木賢治)


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