2009.07.30

090721SIA評論:21世紀の日本の教育 第三回:普遍の教育と不変の法則
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急激な時代の変化と普遍の教育
私が、主催している勉強会に「21世紀問題研究会」がある。1994年7月23日に発足し、各分野の一流の識者に協力を戴き、回を重ね既に15年、92回に達している。各講演者は年齢、専門領域は違うが、学ぶことが多い。やはり根底となる原理原則は時代を超え領域を超え共通している事に驚かされる。この研究会の発足の趣旨は日本にとって狂瀾怒涛の時代であった100年を振り返り(1894年-1994年)、21世紀の100年を見据える小さなシンクタンクを目指したものである。

因みに1894年から1994年の100年は、前半の50年が日清戦争(1894年7月―1895年4月)が1894年7月23日に実質的に始まり、日露戦争(1904年2月6日 - 1905年9月5日)、第一次世界大戦(1914年7月28日 - 1918年11月11日)、ロシア革命(1917年)、シベリア出兵(1918年―1925年)、支那事変(1937年7月―1945年8月)、第二次世界大戦(1939年9月1日−1945年9月2日)と続いた。後半の50年は、中国内戦の拡大と中華人民共和国成立(1946年6月−1949年10月1日)、朝鮮戦争(1950年6月25日-1953年7月27日)、冷戦(1945-1989年)、日本のバブル崩壊へと至る。尚、第一世界大戦の連合国、日英米仏によるシベリア出兵は「革命軍によって囚われたチェコ軍団を救出する」という大義名分で行われた。

この100年を省みる事により、21世紀の日本、世界を予見できるヒントが見つかり、21世紀を日本の世紀、世界繁栄の世紀とする事が可能であるとの認識に基づき「21世紀問題研究会」を設立した。上記100年の歴史を見ても一見、驚天動地、激動の100年に見えるが、そこには人間社会、歴史の普遍の傾向が見て取れる。

社会の変化と義務教育
時代が変化する時、教育はどうあるべきか、変化に先んずる教育が可能であるのか、はなはだ哲学的問題を含んでいる。悪戯(イタズラ)に枝葉末節に走り、最先端思想、最先端科学、最先端技術と称されるものを追うことが教育ではない。先端技術とは歴史的承認を得ていない未熟な揺籃期の技術であり、そこから義務教育を必要とする若い人々への伝えるべきノウハウを引き出すには早すぎ、危険性を伴うのである。人とは所詮、一人一人を見ると、この世に生を受けわずか100年足らずの内に去って行く存在に過ぎない。百年前、千年前に生まれた人といえども、生れ落ちた瞬間の資質は変わっていない。1万年前の人間もそれほど大きく変わっていたとは考えられない。

人として生まれながらに備えている共通の先天的な資質を基に、教育を与え、生れ落ちた環境の中で生活し、変化に対応できる能力を身に付けさせるのが教育の普遍的役割であり、価値である。ここに教育の不変の原理原則がある。

日本の義務教育の歴史と義務教育改革の必要性
先月号で過去120年(1880年代から現代に至る)に及ぶ日本の義務教育の歴史を述べ、その惰性と政治の怠慢を批判した。読者の記憶の整理と、新しい読者のためにその内容を要約、引用する。

“「1885年に初めて内閣が設けられ初代の文部大臣に森有礼が就任し、学校制度の改革に着手。翌年の1886年3月に帝国大学令、ついで4月には師範学校令、小学校令、中学校令が公布された。これによって日本の近代学校制度の実質的な基礎が固まった。」と言われている。この当時の義務教育年限は4年間である。約120年前の事である。・・・120年前には4年制の義務教育を実施し、60年前には9年制の義務教育を実施して来た。その後の日本の経済成長、日本社会の富の蓄積を考えると、経済的に義務教育年限を12年に拡大することは実に容易なことであったはずである。しかし、義務教育年限は9年間に据え置かれたままである。・・・近代国家として日本が4年制の義務教育制度を導入して120年が既に過ぎ、9年制の義務教育に延長されて既に60年が過ぎた今、未だに9年制の義務教育に固執しているとするならば、日本社会は「惰性の法則」に支配された自立心無き、怠慢に満ちた決断力無き社会と言わなければならない。”

社会の変革に応じて、日本の義務教育の抜本的改革を論じたものである。教育に理念は必要不可欠である。しかし、理念や奇麗事だけで全てが解決するものではない。現実を直視することの無い理念や奇麗事は危険ですらある。教育には、それを支える教室や教材といった設備やノウハウ、人材、予算が必要不可欠である。その設備、人材を提供するためには金と時間、準備期間を必要とし、それを理解し、支える社会が必要である。日本社会は豊かとなり、社会として教育のための予算、又労働生産性の高まりにより修学年限の延長、拡大を可能にする時間を作り出して来ている。更に、この120年間の経済成長と相伴った社会の高度化、国際化は私達の生活空間の拡大をもたらし、情報の幾何級数的ともいえる蓄積は私達に必要とされる知識、技術を増加させ、高度化させただけでなく、同時に教育のために必要とされる教材を初めとする知識、情報も蓄積してくれたのである。

人間本性、成長に沿った教育
現在私達日本社会が持つ利用可能な「教室、教材等の設備やノウハウ、人材、予算」を上手く有効に活用し、人間の本性的な成長の時間に沿った教育を行う必要があると私は思っている。人とはどこまで行っても一個の生き物であり、一個の動物である。医学の進歩、衛生状態・栄養の改善等により平均寿命は確かにこの100年急速に伸びて来た。しかし、人間が肉体的に成長し一個の成人となる年限には大きな変化は生まれていない。高々100年、200年で生まれるはずも無い。古来より語り伝えられる、人の人としての肉体的に成人に達する年齢は、個人差は若干あろうが、満年齢で15-17才である。

日本の若者がこの年齢に達する時点で、現代社会において必要とされる基礎的な知識、十分な基礎学力、将来応用可能な理性、ノウハウを提供することが、今の日本社会の将来世代に対する責任である。これが、私が4歳就学開始、16歳義務教育終了とする提案を長年続けている所以である。人間の動物的な成長時間を考え、こういった12年に及ぶ義務教育を与えれば、当然の帰結として16歳で成人として認め、諸権利を付与し義務を要求して行くことが人を人として遇する道であり、自立した人間を育てる最善の方法である。

教育に終わり、完成という事は無い。十分な成長、人格形成を待って選挙権を与え、自立した人として遇するというのは、教育に対する過信であり、人間性に対する無知を示しているに過ぎない。

日本の教育の克服すべき課題
義務教育12年制採用時の学校制度は、現在と同じ6,3,3制度とするか4,4,4制度とするかは識者の判断を待つとしても、初等においては一層の基礎教育(読み書き算盤、体育、音楽、絵画といった情操教育)を中心とし、中等教育においては伝統的な数学、理科、社会、国語、英語教育を含めた全人教育を目指し、高等義務教育においては一個の人間として自立した批判的精神を身に付ける人材教育を行ってゆくべきだと思っている。

因みに、今回の前段の記事は、インターネットの検索その他で、私自身の記憶を確認しつつ修正し纏めている。悪戯(イタズラニ)に知識を詰め込む必要性は、現代技術の進歩と、情報入手の容易さのゆえにもはや無いのである。今後の社会で重要性を増すと思われるのは「論理考証能力」、「批判的精神」と「自立した判断力」である。この3つの要素が、現在の日本の教育には歴史的に不足しており、私が危惧し、日本の教育改革を提言している理由でもある。(佐々木 賢治)
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余談ですが、英語教育についても日本社会で大きな誤解と混乱が生まれていると思います。単に英語力育成のためだけの教育は本来ありえず、人間教育の中に如何に英語教育を生かして行くか、こういった哲学重要と考えています。もっとも多くの英語教育は、それ以前の教育技術、方法論、教材にまだまだ改善されるべき点が山積みしているのが実情です。

佐々木 賢治
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2009.04.23

SIA:国際ビジネスの知恵袋

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090423-SIA評論:名古屋市長選挙と閉塞感漂う日本社会

今回の名古屋市長選挙、名古屋市長選としては久しぶりの本格的な選挙戦となった。しかし、いろいろな人々がいろいろな応援意見を述べ選挙戦を繰り広げているが、その割に地元の各市議会議員、各県会議員の動きは今一つといった言葉も耳にする。労働組合の動きも今一つである。

中央の政治絡みの思惑も見え隠れする。現在日本中が、閉塞感に打ち拉がれている中、自民党、公明党は中央政府の官僚OB、細川氏を担ぎ出し、方や民主党は名古屋選出の衆議院議員を長年勤めてきたを河村氏が政治生命を掛けて出馬するも、当初はこれまでの様々な経緯からか民主党名古屋市議団、愛知県会議員団が反対するといった事態。河村氏の「議員は歳費をもらい過ぎ」といった日頃の発言がその理由の一つである事は間違いないであろう。自治労、市議、県議といった名古屋市職員、市政関係者の微妙な思いも一部伝わってくる。又財界や県関係者にはお上、中央官庁への思惑も垣間見える。

しかし、ここはやはり名古屋を第一に考え候補者を選ぶのが地方自治の本筋であり、その事が回り回って名古屋の存在感を世に問う事になる。今の日本に必要なのは政府頼りを廃して、自らが自らの英知と努力で困難を克服する自立心である。名古屋に中央官庁との繋がりを象徴する様な人物を市長とする必要は無い。

宮崎の東国原英夫(ひがしこくばる ひでお)知事、大阪の橋下 徹(はしもと とおる)知事、東京の石原慎太郎(いしはら しんたろう)知事、実に個性的で地方自治を実感できる首長である。

方や愛知県、名古屋市は長らく没個性的な県知事、市長が続き、当地の存在感を示すには今一つの首長が続いて来た印象は否めない。閉塞感漂う日本に衝撃を与え、一つの選択肢を示す地方自治を名古屋で推し進めてよい時期に来ていると思う。今日本社会が必要としているのは、地方からの試行錯誤、改革である。

現在進んでいる名古屋市長選挙で有力候補といわれる細川、河村の両氏を比較すると細川氏では名古屋がスモール東京、スモール大阪となってしまう様な気がしてならない。ここは、河村氏の泥臭さと既得権益者を敵に回して戦いを挑む勇気、行動力、自ら痛みを分かち合い、血を流しても経費を削減し名古屋を活性化しようとする意欲を評価し4年間市政を任せてみたいと私は思っている。しかし、名古屋の市政を選択するのは名古屋市民一人一人の総意であり、名古屋市民の選択を見守りたい。(文責 宇田司郎)


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2009.03.24

世界で戦う日本人、企業、組織を名古屋から支援するプロフェッショナルハウスSIA

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第二回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック(World Baseball Classic)は、北米・中南米・東アジア・欧州・アフリカ・豪州から合計16の国と地域が参加する、野球の国際大会)もいよいよ決勝戦を残すのみ。

日本と韓国が勝ち進み、日本時間の明日3月24日決勝戦となる。米国での2次リーグ、現地時間一昨日3月21日より始まったそれに引き続く決勝トーナメントを見ても米国国内は今一つ盛り上がりに欠けている。騒いでいるのは、日本と韓国だけではないかと思う。

このため、本当に面白いのは場外での野村さんと城島選手の舌戦である。因みにこの文章を書きながら今、「野村さんと城島選手の舌戦」でインターネットのグーグルで検索を掛けたら、「野村さんと城島選手の舌戦のニュース検索結果」の表題で大変多くのサイトがリストされている。

どうも、私と同じ視点で楽しんでいる人が多いようである。両者の細かい言葉の端々には私は関心がない。交渉戦略、国家間、企業間の戦い、交渉といった観点から、一つ私なりに野村監督と城島選手の舌戦なる物を見る事にする。

野村さんの言葉に「勝ちに不思議な勝ち有り、負けに不思議な負け無し。」という言葉がある。少なくとも広くこの言葉が世に伝えられているのは、多くの人が共感するからであろう。所詮私達は、大方の場合いかなる名言もそれを伝える仲介者無しには、耳にする事ができず評価できないのである。

この限界を自覚しつつ、以下私の意見である。やはり、野村さんの言う如く、城島選手はバカだと何度となく思った。得意げに日本のマスコミに自らの「賢(さか)しらさ」をひけらかす事によって、戦いを不利にしている発言を幾度も新聞記事で目にしたからである。

その一。東北楽天ゴールデンイーグルスの岩隈 久志選手が好投した現地時間3月18日のキューバ戦。翌日の日本の新聞朝刊(3月20日付)を見ると、日経新聞や中日新聞に“最大のピンチとなった四回の2死一、三塁の場面では捕手城島と一芝居うった。ここは三振がほしい。となると最後はフォークボールとなるが、その「落ち」は相手も当然予想してくる。そこで追い込んだところで「サインに首を振らせた」と城島。岩隈も見事な演技で2度、3度と首を振る。”とある。思わず私は、このアホがと絶句した。

その二。実は時系列では、「その一」の前の出来事である。城島選手は、3月9日の岩隈選手が先発し敗れた日韓第二戦の後、次の日韓戦に備えるためあの選手には今日ここにボウルを投げさせておいたと述べ記事になった。実にアホである。物の見事日韓第三戦、城島がマスクをかぶったが負けている。こういった発言をチャラチャラとする様では、不思議な勝ちはあっても、不思議な負けはなくなる。度々引用される城島の発言を読んでいると、裏の裏を掻くために行っている高等戦術発言とは思えない。自己の「賢しらさ」を吹聴している発言の様である。これも米国流、海外で生きて行くための知恵とかばう必要はなく、バカと言えばよい。

それにつけても、明日の日韓決勝、怖いのは金寅植監督である。日本に勝った時ですら、記者会見で「技術的には日本が上だが、野球は強い物が必ず勝つものではない」と述べている。日本向けの発言とは思えない。「敵を知り己を知るもの百戦危うからず」(孫子)を熟知した知将と思えてならない。

自分のキャリアと祖国での名声を両天秤に掛けながら戦うプロ野球選手。米国民が燃えていない米国で、一流の米国選手が結集して最善を競うとは思えない。計算に合わないからである。対日本戦となるといやが上にも燃え上がる韓国。韓国プロリーグの給与、日本プロリーグの給与、米国大リーグの給与と母国における名声。これを掛けて戦う韓国は強い。本日3月23日の日経朝刊の米国戦を前にした「きょう米と準決勝」、「細かい野球 思想も激突」、「城島がかぎ握る」と見出しのついた記事、“頭脳比べなら負けないという日本の伝統を示せるかどうか”とあるが、果たして明日3月24日(現地時間3月23日)の日韓決勝戦、勝てるのか否か。 野村さんの言葉に「勝ちに不思議な勝ち有り、負けに不思議な負け無し。」を思い出す。イチローの沈黙に掛かっているのか?(090323-SIA評論文責 宇田 司郎)


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2008.10.13

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今回の081013-SIA評論要約は一般公開として配信致します。定期購読ご希望の方はSIA評論編集部迄一報下さい。(この記事の第三者への配信については、事前にSIA評論編集部迄連絡下さい。) 081013-SIA評論要約:2008年10月13日午後9時25分発 SIA評論 佐々木

081013-SIA評論要約:風評、誤報に見るモルガンスタンレーへの三菱東京UFJファイナンシャルグループの出資問題

9月23日に報道された「三菱UFJ、米モルガン・スタンレーに出資 最大9000億円」の出資案は、いろいろな意味で実に面白い課題である。その後の動きを見たら明らかなように、ある意味で軽率な行為であったからである。(省略)

その後、何度か三菱東京UFJが出資を取りやめる風評が流れ、その度に株式が売り浴びせられる展開となっている。これは風評を流す人々に問題があるのでは無く、現在の米国発金融問題の深刻さを考える時、こういった愚かな条件で出資するような金融機関が実際にあるとは多くの株式市場の参加者が信じていない事の裏返しである。

三菱東京UFJ銀行の経営責任者に対する、株主訴訟も十分に考えられる程、状況は厳しい環境にある。(省略)

一方、同じく今回の一連の混乱の中で、ゴールドマンサックスに対する三井住友フィナンシャルグループの出資問題について誤報があった。ある日本の民放テレビ局で、あるアナウンサーが三井住友が出資を断ったとニュース報道中に発言する事態があったのである。その後、番組中にゴールドマンサックス側が必要ないと断ったと訂正された。しかし、果たして真相は如何であろうか?

ミスをするのが人である。しかし、関係者の取材をする中で、オフレコとして掴んでいた真相を思わず語ったというのが、実際である可能性は大変強い。ゴールドマンサックスは、1990年代後半、クリントン政権の下で財務長官(1995年1月-1999年6月)を務め金融立国を推進した立役者ルービン(Robert Rubin)が共同経営者(共同取締役会議長)として長年活躍した会社である。(省略)

日本の金融機関が出資を見送るとなった場合の衝撃は、計り知れないものがあった。その時点で、慎重な対応を行った三井住友が先方より必要ないと言われたと発表する可能性は大いにある事である。

いよいよ、明日10月14日には、これまでの三菱東京UFJファイナンシャルグループ側の報道機関への発表によれば、出資を決め、行うとの事である。しかし当初報道の株価から半値以下に下げた株式に、以前の価格で投資するとなれば、即座に株主は株主訴訟の準備をすべきと私は思う。因みに、三菱東京UFJファイナンシャルグループのホームページに掲載されているこの問題に対する意見は、2008年10月13日現在以下の通りである。

MUFGは、モルガン・スタンレーの議決権の21%(潜在株式調整後)を90億ドルで取得します。出資形態は、約30億ドル相当の普通株式(1株当たり25.25ドル)、および約60億ドル相当の転換権付き永久優先株式(転換価格1株当たり31.25ドル)とします。また、MUFGは、出資比率20%を維持する権利を有するほか、出資比率10%以上を維持する限りにおいて、取締役1名を派遣する権利を有します。詳細は、2008年9月29日付けニュースリリースをご参照ください。

これほど愚かな、決断があるかと危惧していたら、ニューヨークタイムズの情報が飛び込んできた。現地時間、10月13日午前2時(米国東海岸標準時間)の情報が、日本時間10月13日午後8時に私の手元に飛び込んできた。その内容を見ると、「万一米国政府がモルガンスタンレー救済をせざるを得ない事態が発生した場合に三菱側を保護する?」(英文タイトル U.S. Officials Said to Offer Protection to Japan Investors)といった話し合いが続いているようである。この情報事態については、関係筋の情報といった書き方になっているが、重要なのはその記事中に見られる現在交渉中の内容である。

Last month, Mitsubishi agreed buy about 21 percent of Morgan Stanley. The investment was to be made in the form of $3 billion in common stock, at $25.35 a share, as well as $6 billion in convertible preferred stock with a 10 percent dividend and a conversion price of $31.25 a share.

Under the proposed new terms being discussed on Sunday night, Mitsubishi would still buy roughly 21 percent of Morgan Stanley, according to people involved in the talks. But all of the investment would be through preferred shares, with a 10 percent annual dividend. About $7.8 billion of those shares would be convertible into common stock at a price of $25.25, lower than originally proposed.

私には、今一つ条件的に三菱にとって現時点で見る限り有利とは思えない内容である。 ここで問われるのは、日本の企業、金融機関の交渉力である。私共は、1年以上も前から米国の金融危機を警告し、日本にとって対処によってはチャンス到来と訴えて来た。しかし、そのチャンスは安易な救済の手を指し述べる事によって生まれるので無い。安易な救済の手をさしのべる行為は、世の嘲りを受け自らを危険に晒すだけである。それがいみじくも風評として紛失したのがここ2週間ほどの動きである。重要な事は、マーケットの調整を見据えて投資する事である。以下、その事を繰り返し述べている、2007年8月17日配信のSIA評論を引用し筆を置く。(分析 宇田 司郎)

070817-SIA評論引用 「米国のサブプライム問題を元凶として、ヨーロッパ、アジア市場にも波及している株式市場の混乱は、間違いなく為替市場の調整をもたらす。円高が進むが日本は静観を決め込み、慎重に対処すべきである。さもなければ、1980年代の円高防止策が、過剰流動性を招き、その反動の急激な引き締め策が1990年代の日本経済の停滞を生んだと同じ事態が、より小規模であるが生まれることになる。***今日本が成すべき事は、十分な市場の調整が行われた後、冷静な経済原則に従い、積極果敢に経済的、政治的決断を行う準備を整える事である。もしこういった準備の整った果敢な経済的、政治的決断と行動を、日本国、日本国民、企業人、経済人が実行する事が出来れば、失われた10年は、飛躍の10年に変わるであろう。」

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081013-SIA評論要約:2008年10月13日午後9時25分発


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2008.10.03

081002SIA評論-補足と回答(080930SIA評論:米国金融危機、健全な米国国民意識)
10月3日の下院審議の展望:9月30日以来の動きと予測

一昨日9月30日の記事はいろいろな反響を生み、多くの質問とコメントを戴いた。質問のほとんどは、SIA評論の定期購読者ではなく、昨年2008年7月以来のSIA評論で私達が指摘してきた「米国金融危機の深刻さ」についての記事を読まれていない方ばかりであった。このため、昨年来の主旨を簡単に要約し、以下意見を述べたい。(このため、この評論も080930SIA評論同様、一般公開として定期有料購読者以外にも送付し、公開しました。)

SIA評論が2008年7月から指摘して来た内容を要約する。
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今回のサブプライム問題の本当の問題はサブプライム問題もさることながら、そういった物に手を出さざる得なかった、米国金融機関、又ヨーロッパの金融機関の実情である。

日本の1980年代日本の大手金融機関が、子会社としてモーゲッジ金融機関を設立し、不動産担保ローンを代替的に行い、又メインバンク争いの中で、不動産を担保として貸し込んでいった背景と同じである。多くの優良企業が十分な自己資金を手にしていたため、貸出先が無く、貸出競争に走らざるを得なかったからである。その際、過去の経験則に従い、逃げも隠れも、又隠す事も出来ない、しかもこれまで値上がりを続けた不動産担保に依存したのである。

実は米国の今回の構造は、値上がりを続ける不動産市場に銀行も、債券を発行する当事者も、又投資銀行も、良い格付けを保証する債務保証機関も、更にモーゲッジローンを借りた一般米国市民も全て依存し、値上がりが続き活況をていする証券市場をより所として、不動産価格の将来の更なる価格上昇を当て込んでいたのである。それを推進して来た一因は、LTCM破綻の際にも見られた低金利政策と政府による救済であった。

こういった事態が継続的に続くと、そこは人間の性、欲に溺れるものである。こういった後遺症は必ず起こり、それが表向きサブプライム問題として表面化した。日本として採るべき方策は、安易な救済に走り自ら怪我をする愚を避け、豊富な日本の資金を有効に役立て、今回の金融危機に際して日本は世界をリードする賢い投資家となる事である。この問題は根が深いが故に、決して安易な救済、国際協調に走ってはならない。米銀を初めとする投資ファンドが、1990年代示したように、冷静なビジネス判断を持って投資し、買収、合併、救済を行うべきである。日本が自ら考え、賢明な対処を行えば、金融界、産業界を問わず、チャンスが潜んでいる。
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以上が、昨年来のサブプライム問題に対するSIA評論の骨子である。その他、金融商品、金融界の構造的問題も論じたが割愛する。

さて、9月29日の下院の否決に対する私共の分析を冷静に読んで戴ければ、なぜ昨日、米国現地時間10月1日金融安定化法案が上院を通過したかも理解戴けると思う。以下、一昨日の該当箇所を引用するので、是非、再読願いたい。引用:(11月4日の大統領選挙投票日は、下院の選挙日でもある。米国の選挙制度では西暦年の4の整数倍の年の11月1日を除く第一火曜日が大統領選挙投票日であり、上院は1/3の選挙区で選挙が行われ、下院は全選挙区で選挙が実施される。下院の任期は2年であるため、2年後中間選挙で又全員が選挙の洗礼を受ける事になる。選挙日まで残す所5週間。各下院議員は選挙民の意識に極めて敏感である。)

さて、明日米国現地時間10月3日に再審議される下院の動きである。この間の動きを注視する必要がある。注目すべき出来事を列記する。

第一に080930SIA評論でも指摘したFDIC(Federal Deposit Insurance Corporation; FDIC:連邦預金保険公社)の保険が保障する貯金上限金額(100,000米国ドル)が、その後の修正で250,000ドルに引き上げられた事が一つ。第二に、米国の自動車業界ビッグ3が要請してきた米国自動車業界向け低利融資策法案にブッシュ大統領は9月30日署名した。金額は250億ドルと、7000億ドル(約75兆円)の金融安定化法案と比較すれば微々たるものかも知れないが、この動きは大きな政治的意味を持つ。

1990年代米国において産業界と金融界で米国の経済政策を巡る戦いが繰り広げられた。それに勝利したのが、当時のクリントン政権下の財務長官ルーベン氏である。ルーベン氏は米国の経済政策を金融立国へと展開しドル高を主導した人物である。ドル高政策の下、巨額の外国資本を取り込みウオール街は繁栄を謳歌して来た。方や米国自動車業界はじり貧を続け、今やGM、フォードといったかっての名門、米国を代表する企業も、その存続が疑われる事態となっている。

ここで米国政治の基本中の基本であるが、各議員は自らの選挙区の利益を守るためには、議員同士の取引をする事が一般化している。自動車産業の歴史的中心地ミシガン州の議員に7000億ドル(約75兆円)の金融安定化法案反対論者が多かったのは理の当然である。こういった議員が、自動車産業救済法案との取引で、賛成に回る事も、又十分予見できることである。この私の推定が正しいとするならば、米国自動車業界に対する米国政府の救済策は、今後更に進み大幅なものとなる可能性が高い。その後の米国経済の行く末は興味深い課題である。

(この先は、会員のみへの情報提供とします。会員以外の方で関心のある方は、会員申込をされるか、10月4日午後5時からの「第66回名古屋MBAフォーラム:金融危機と日本経済」に参加下さい。本日10月2日朝日朝刊社会面、10月3日の日経夕刊社会面、読売朝刊のSIAの広告をご覧下さい。)(081002SIA評論-補足と回答(080930SIA評論):文責佐々木 賢治)




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