2011.10.26

名古屋商工会議所 那古野2011年10月号

名古屋商工会議所 那古野2011年10月号

日本時間10月26日早朝ニューヨーク(現地時間10月25日)で75円73銭/ドルと最高値を付け大騒ぎ(マスコミや一部関係者だけかもしれませんが)、大見出しとなっていますので、一言。

事態が起きてもっともらしい説明をして騒ぐのは、今回の地震、福島原発事故と同じ。地震予測については地震学の歴史と地球の歴史を比較すると地震学自体が未熟で発達段階にあり已もう得ません。福島原発は東京電力トップの管理能力、自然科学(原子力発電所)への認識不足によるものです。SIA評論で私共が当初より主張していた海水の早期注入のしなかった事が、致命的問題となった事が徐々に明らかになり始めています。無知と決断力の無さは何時の世にも悲劇を生み、それを糊塗するために悲劇に倒れた人々を英雄として称えるのは何時の時代でも無知なリーダーの処世術です。

同様な事が、円高、為替問題です。SIA評論定期購読者には、日頃から分析をお伝えしていますので、付言はしません。円高とサブプライム問題を警告した4年2ヶ月前のSIA評論(2007年8月17日号)記事を以下公開しますのでご覧下さい。尚、対ドル、ユーロの円為替水準については、下記サイトが解り易いと思いますので、2007年8月17日号SIA評論を読まれる際、参照下さい。(尚、SIA評論は年間購読料6,300円の購読者向け評論ですが、この記事は当時は公開しましたので、購読者でない方も記憶があるかと思います。) 円ドル、円ユーロ為替レートの推移記録  http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5070.html

その前に経済学、国際ビジネスの基礎知識は必要です。テレビ桟敷の評論家では役立ちません。佐々木インターナショナルアカデミーはガルブレイスの大恐慌の分析書「The Great Crash 1929」、その他経済学、国際ビジネスの原書読解講座、国際ビジネス講座を開講しています。その一つとしてThe World is curved原書読解ゼミを希望者に対して初めます。その中にも、以下の記事の末尾に触れている、ブラックマンデーに纏わる詳細な記述が日本の対応についてあります。当時私は日興證券本社国際金融部在勤中でした。以下の2007年8月17日号記事の赤字、黄色のカラーは今回着色したものです。

070817-SIA評論:世界の株式市場の動きと円高
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本日、日経平均株価が急落し、前日終値比874円81銭安の1万5273円68銭で取引を終えた。

今回の一連の動きを見ていると、ブラックマンデー(注1参照)を思い出すが、私の見解は「日本は市場の動きに任せ、愚かな介入を行うな!」である。以下まず、簡潔にこの点について述べる・

まず株式市場を離れて円高から筆を起こしたい。今回の円高は、ここ数ヶ月私がいろいろな形で述べて来た事、「日本の過度な円安は臨界点に来ており、急激な円高が発生する。」、が発生したにすぎない。多大な貿易収支の黒字、さらには20年、30年前と比べると大幅な改善を示している知的所有権(特許、ノウハウ)を含むサービス収支の大幅な改善により、日本の経常収支黒字は膨大な額に達しており、こういった経済のファンダメンタルを見ると、日本の円安は異常な事態であったし、異常な事態である。この歪(イビツ)な事態を支えてきた一因は超低金利である。

一度こういった事態、歪(イビツ)な事態に火がつけば、爆発が起こるだけである。火について述べたので、水についての喩えで余談の説明をする。最近のこれまでの円安は、水蒸気が過飽和な状態にある異常事態が長期にわたって続き、ちょっとした外的な刺激により、一斉に過飽和な状態にあった水蒸気が液化現象を起こしたのである。物理的現象は、物理的限界を超えては進まないので、問題は知れている。しかし、人間世界の現象は、経済といえども人々の思惑が絡むので異なってくる。

人間の営む経済現象は時として事態を一層深刻化する事がある。それは人が自らの利益を守ろうと狂奔するからである。狂奔し、政治力を使い、世論マスコミを使い自らの目先の利益を守る結果、事態を一層深刻な状態にしてしまうのである。しばらく続いた、異常に低い金利と円安で十分な甘い汁を吸い続けて来た企業、金融機関と個人投資家が、ここ数年一層円安をもたらす経済現象を下支えして来たのである。金融不安解消、銀行救済を意図した低金利政策と円安に、当然な経済行為である個々人の欲、企業の欲が結びついた結果である。経済に無知な政治家が企業収益、雇用問題に突き動かされ、一層の低金利、円安を主張し、更に国内経済、特に所轄産業界の短期的「収益動向と雇用問題」にしか関心の無い官僚組織が後押しした結果生じた経済政策が生んだ「長期異常事態」、それが「円安現象」であった。

今回の世界的株価暴落と一斉に動き始めた円高傾向に対して、又政府、日銀の介入を求める動きが今後一層生まれるであろう。しかし、しばらくは日本政府、日銀は介入すべきではない。日銀は米国連銀と既に共同歩調を取り、潤沢な資金供給を始めているが、実に愚かな行為である。一つの経済的悲劇を回避しようとして、過剰流動性を生む愚は絶対に避けるべきである。ましてその悲劇の根本原因が日本にはなく、日本経済にもたらす効果が期待できず、副作用だけが予見される愚作は取るべきではない。

米国のサブプライム問題を元凶として、ヨーロッパ、アジア市場にも波及している株式市場の混乱は、間違いなく為替市場の調整をもたらす。円高が進むが日本は静観を決め込み、慎重に対処すべきである。さもなければ、1980年代の円高防止策が、過剰流動性を招き、その反動の急激な引き締め策が1990年代の日本経済の停滞を生んだと同じ事態が、より小規模であるが生まれることになる。

日本は米国の株式市場を下支えする必要はなく、ましてや現在混乱を深めつつある韓国(17日現地時間午後4時終値1638.07 前日終値比-53.91)を初めとするアジア諸国の証券市場、為替防衛に協力する必要も現時点ではない。今日本が成すべき事は、十分な市場の調整が行われた後、冷静な経済原則に従い、積極果敢に経済的、政治的決断を行う準備を整える事である。もしこういった準備の整った果敢な経済的、政治的決断と行動を、日本国、日本国民、企業人、経済人が実行する事が出来れば、失われた10年は、飛躍の10年に変わるであろう。(文責 佐々木賢治)

注1:ブラックマンデーとは、1987年10月10月19日月曜日、ニューヨーク株式市場で発生した過去最大規模の暴落。ダウ30種平均の終値が前週末より508ドルも下がり、この時の下落率は22.6%と1929年の暗黒の木曜日の下落率12.8%を大幅に上回った。このニューヨーク株式市場の暴落は世界的株安を引き起こし、日経平均株価は3,836.48円安(14.90%)の21,910.08円と過去最大の暴落となった。この時の裏話であるが、当時大蔵省の証券局は世界的株安を防止するため証券大手4社(野村、大和、日興、山一)の株式部長を呼び株式の買い支えを指示。***********************************

以上復刻版です。SIAでは皆様の要請に応え上記問題、各種国際ビジネス問題についての講演活動も行っています。SIA評論講読ご希望の方はSIAまで連絡下さい。


佐々木 賢治
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2011.10.26

名古屋商工会議所 那古野2011年10月号

名古屋商工会議所 那古野2011年10月号

第749回SIA国際フォーラム(英語講演)
10月29日(土)午後1-2時半(参加費2千円 要予約)
マラウイ:歴史,文化,教育制度 マラウイ国籍大学院生

10月24日SIA情報として一部公開でお送りした「111024-SIA情報:カダフィ、82年前1929年10月24日、英語教育」中で触れた英語教育にも一部関係する記事がSIA社友投稿者より届きましたので、日本社会にとって重要な情報と考え公開でお送りします。公開のため、引用や転送は許可しますがその際は必ず、SIAへCcを入れるなり報告下さい。公開記事の場合もブログ掲載は会員への掲載後となります。公開メール配信希望の方(年会費2千円)、SIA評論講読希望の方(年会費6,300円)はSIAまでメールにて連絡下さい。

111025-SIA評論:中国、韓国の変化と国際学会における日本の存在感
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北京からつい先日帰国しました。先月のソウルの学会も含めアジアの国の首都を見る機会を得ました。今回は特記するほどの情報はありませんが、私がイメージしていたものとは異なり、かなり豊かな街になっているようです。

ソウルに至っては更にスマートな都市に、北京は量的なものから少しづつ質やモラルの向上に、社会がゆっくりと動き出している感があるのが印象です。また、ソウルでは一台も軽自動車を見かけませんでした。200万円以上クラスの車が相当多く、「見栄」,「背伸び」ともいえるものが非常に多いことが気になりました。

さて、ソウル・北京の学会も含めて言うと、経済発展の著しい中国の力が圧倒的です.それに群がる多くの企業が学会に参加しており、学会の幹事や委員に中国の先生が食い込んできています。

韓国は、量から質へ移行している模様。英語が流暢な韓国人の教員が多く、大抵は米国留学経験者で相当な比率で重要な役割を占めているようです。KAISTという韓国の大学ではすでに授業が英語です。学会の幹事や委員にも入っていて中国同様によいポジションを得ているようです。

日本に至っては、一昔前に栄えた国という感じであまり注目されていないようです。日本の教員は一部を除いてやはり英語やコミュニケーションの経験が足らず、相変わらずといった模様。。。

それと、気になるのがヨーロッパ勢です。日本の年輩の先生が言うには、日本が今の中国のような時期があり、欧州の偉い先生方が学術的にもアドバイザ―のような存在だったらしく、場所が中国に代わっても同じように欧州主要国のメンバーは相変わらず学会の中心です。この組織図はほとんど代わっていないようですね。

そういう意味では、欧州は学術的に長く素晴らしい歴史もありますが、うまくやっているな(おいしいとこどり)と感じざるを得ません。(SIA評論投稿者:SIA社友)
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上記の記事に関し、一言付言します。「欧州関係者に上手くやられている」との指摘がありますが、1970,80年代米国でも同様な事例(日本関係者が米国に上手く利用されている)を沢山目撃しました。外国著名人との知見を宝物の様に振り回す関係者を未だに多く見ます。上記のような冷静な眼を養う必要があります。


2011年10月11日日経新聞広告の一部 佐々木インターナショナルアカデミーの語学教育と約束説明会 10月12-16日実施

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佐々木 賢治
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2011.09.07

SIA教育モットー「継続とは力なり」、教育三方針と(ようこそ)カメ

SIA教育モットー「継続とは力なり」、教育三方針と(ようこそ)カメ

時の流れは早いもので後4日で米国医テロ事件10年、東北震災より半年です。前日の9月10日SIAではその特集公開講座を開催します。

さて、その前に先月8月24日SIA情報「SIA情報:大学での工学英語講義と職場での英語教育」送付の際、付言しました「110822-SIA評論」を本日一般公開し、添付書類で送ります。ご参考になれば幸いです。その内容項目は以下の通りです。

「2011-2020年の世界と日本 第9回:円高が示す日本の長所」
京浜工業地帯三位に転落しても進む東京一極集中に学ぶ海外進出

自己評価の難しさ:敵を知り己を知れば百戦危うからず
日本社会の長所、短所
東京一極集中の脆弱さ:その危険性を増幅する中央政治、官僚、マスコミ、知識人
世界と日本の状況:中東民主化の嵐と津波に襲われた日本
浮世、当てにならぬ人気:実力と評価
円高を活かせ:京浜工業地帯三位に転落しても進む東京一極集中に学ぶ海外進出
アジアの首都機能日本:東京繁栄に学ぶ日本の未来像


名古屋商工会議所 那古野2011年4月号(大) 国際ビジネスのコンビニ、翻訳、通訳、語学教育のご相談は国際ビジネスのプロフェッショナルハウスSIA

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SIA評論とは:2000年より定期的に電子メールにより配信始めた評論です。その切っ掛けは1992年、1997年頃に佐々木及びその関係者が地元紙に時折寄稿していた記事、連載記事を定期化した電子メール配信です。2007年より有料配信となり、2008年10月24日号「米国発金融危機後の世界の株式市場の展望と日本」より、評論の一部記事は一部月刊誌にも掲載を開始しています。購読料は年間契約が前提で月500円、有料購読者からの質問には調査資料に基づき回等致しています。一般公開記事読者への回等は致しません。

各記事内容に対する講演依頼については時間の許す範囲で対応していますので、SIAまで連絡下さい。

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2011.08.24

SIA評論講読希望の方はメールで申込み下さい。(年会費6千円)、以下最新号の項目です。ご参考まで。

110822-SIA評論「2011-2020年の世界と日本 第9回:円高が示す日本の長所」 
自己評価の難しさ:敵を知り己を知れば百戦危うからず
日本社会の長所、短所
東京一極集中の脆弱さ:その危険性を増幅する中央政治、官僚、マスコミ、知識人
世界と日本の状況:中東民主化の嵐と津波に襲われた日本
浮世、当てにならぬ人気:実力と評価
円高を活かせ:京浜工業地帯三位に転落しても進む東京一極集中に学ぶ海外進出


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2011.06.14

名古屋商工会議所 那古野2011年4月号(大) 国際ビジネスのコンビニ、翻訳、通訳、語学教育のご相談は国際ビジネスのプロフェッショナルハウスSIA

名古屋商工会議所 那古野2011年4月号(大) 国際ビジネスのコンビニ、翻訳、通訳、語学教育のご相談は国際ビジネスのプロフェッショナルハウスSIA

3月11日の震災以降、SIA評論・情報を経営顧問先企業やSIA評論等年間購読者以外の方々にも、公共性を考えSIA評論等メール送信の一部を公開して来ましたが、そろそろ通常の状態に戻します。

このため、今回の「110613-SIA情報:経営的視点に欠ける日本の農業と政治への識者、学者、マスメディアの見解」を評価され、この種分析・情報配信や企業戦略等SIAの情報提供・分析、コンサルティングご希望の方は佐々木まで一報下さい。 (SIA評論等情報サービスは年間6千円より、企業顧問サービスは中小企業の場合月間3万円より、顧問契約の無い企業・団体の国際戦略・企画等のご相談は一件30万円よりお応えしています。翻訳、通訳、語学教育、各種講演会企画・講師派遣等については個別に見積致します。)


三猿追放:読めザル、聞けザル、話せザル

三猿追放:読めザル、聞けザル、話せザル

塙町乾燥椎茸の件:震災以降の皆様の協力により、お蔭様で福島県東白川郡塙町の乾燥椎茸の販売は好調で、第二回販売分(13.2キロ=126×105g)も好調で予約分も含めると既に111袋を販売し残り15袋です。協力戴ける方は追加注文も可能ですので連絡下さい。第一回目販売分を含めた累計販売はほぼ200袋販売致しました。このため今後も、現地の皆さんが希望され、又皆さんの協力がある限り第三回、四回と継続を予定しています。「福島県東白川郡塙町乾燥椎茸販売」企画は各関係者の熱意に応え、私共のノウハウの一部を利用し協力させて戴いたもので、主体は発端となった豪州出身のMr. James Wood, 塙町関係者、更には放射線検査に協力戴いた方々、私共のメールに応え販売協力を戴いた皆さんが主役であり、今後も継続できるか否かは販売しました商品の商品力(品質、価格)です。


SIAのモットー:教育方針

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110613-SIA情報:「経営的視点に欠ける日本の農業と政治への識者、学者、マスメディアの見解」

日本の農業に対する関心は高まっている。この20年、それ以前からもであるが、日本農業建て直しについて新聞、テレビ等メディアで絶えず取り上げられて来た。その決まり言葉は「?競争原理の導入、?経営規模の拡大、?マーケティング」にほぼ集約される。

その各々は確かに言葉として正しく、文章としても又発言としても間違いではない。こういった言葉が20年も30年も繰り返され誰もが、批判する事無く受け入れているとすれば、ではなぜ日本農業は衰退の一路を辿っているのか? 理由は簡単である。間違っているからである。

この20年、30年確かに徐々にではあるが競争原理が導入され、マーケティングを行い経営規模を拡大した農家はある。しかし、マスメディアに踊る学者や評論家推奨の規模の拡大を行った農家、農業法人が果たして本当に成功しているかは実に疑わしい。倒産したり、低金利の恩恵を被り借金漬けで経営を続け、補助金に依存しているのが実情ではないか?

成功したとされる規模拡大を行った農家も含め、農業の自由化が更に進むと、現状では倒産・廃業の危険性が実に高い。なぜか理由は至極簡明である。その種明かしをする前に、少し直近(6月8-10日)の日本経済新聞の記事を紹介したい。

日経新聞朝刊、経済教室欄に6月8日、9日、10日と「世界に通用する農業へ」と題し上中下と3回、三者の寄稿文が掲載された。それぞれ副題は8日(上)「農地集約、住宅地と一体で」(本間正義氏 東京大学教授)、9日(中)「経営力強化へ新規参入を」(大泉一貫氏 宮城大学副学長)、10日(下)「高品質生かし輸出に活路」(山下一仁 キャノングローバル戦略研究所研究主幹)となっている。まさに「?競争原理の導入、?経営規模の拡大、?マーケティング」通りの言葉である。しかし、この3つの記事でも、この二、三十年の多く議論同様、一番重要な生産設備価格、即ち農地価格は一切触れられていない。これでは産業、経営としての農業を語ることにはならない。

ところが、6月10日(金)付日本経済新聞朝刊7頁の左上に面白い記事があった。「地球回覧:農地に流れ込むマネー」である。

その記事を一部引用すると、「1エーカー約4、000平方メートル8千ドル、約65万円強で農地の出物があるが、興味があるか。」 返事はノー。「そんな高値で農業の採算が合うとは思えない」(米穀倉地帯イリノイ州中部の農家マイク・ローゼンバーガー氏(60歳))。「今の土地取引は私に言わせれば、正気とは思えない」とある。日本農業の問題とは、この農地価格の問題である。

因みに日本では、私の山間部の郷里(愛媛県北宇和郡鬼北町)でさえ、現在1反100万円(以前は200万円)。一反は300坪、1,000平方メートル100万円であるから正気の沙汰と思えないといわれる上記価格(千平米16万円)と比べても6倍強。6月11日開催「SIA経営フォーラム」での中国関係者の発言によると、「中国では1苗が666.7平方メートで1年間の賃料が3千円」との事。一反にすると4,500円。資本金利を5%とすれば土地代は9万円相当。10%とすれば4万5千円となり、日本の土地代の11分の一から22分の一となる。日本の農地価格は農地バブルと危惧される現在の米国の農地価格の6倍強、中国10-20倍強である。農業を行うには土地価格が高過ぎるのである。因みに1ヘクタール(1万平米:一町=10反)の米の年間収量は一期作では5千キロ。1キロ200円として100万円の売上げに過ぎない。一千万円の売上げのためには時価1億円の土地代が必要となり、農薬、肥料、機械の償却費、人件費が掛かる。しかも日本の農薬、肥料代は諸外国と比較して甚だ高い様である。幾ら低金利の時代とは言え長期資本コストを5%と考えると、完全に赤字となる。

しかし、一反100万円とは一反300坪であるから、一坪3300円。日本での農業を可能とする土地価格の採算点を一反30万円とすると坪単価千円となる。しかし現在の日本の一般宅地価格を考えると果たして、そういった価格で日本の農地が集約される時代が来るか? 読者は自宅の土地を坪千円で計算すると幾らとなるか一度計算して戴きたい。百坪で10万円に過ぎない。農地の将来住宅地への転用を考えると農地価格が大幅に下がるとは思えない。しかし、予測し難いのが将来である。山村、農村部の過疎化が更に進み、耕作放棄地が更に拡大すると、こういった事態が将来起こり得ないとは言えない。

今回は紙面に制限もあり、又一般読者に解り易くするため、農薬、化学肥料の農家購入価格の国際比較については言及を避けた。しかし、農業の主要コストである土地代、化学肥料、農薬コストを分析し国際比較すること無しには、日本の農業の未来像は識者、学者、マスメディアの言葉遊びとなり、経営は絵空事となる。

不毛の議論に覆われる政治と農業
この不毛の議論を数十年に渡り繰り返して来た日本農業への取り組みと現状は、実は現在の日本の政治を象徴する物である。日本政治の現状と将来展望に置いても税収、国債残高、国家財政の現状、優先順位を置いた財政支出と言った具体的数字に基づく地に足のついた議論が必要であるが、空理空論に流されて来た。国家ビジョンとは架空のキャンバスには虹を画く事ではない。国家ビジョンとは冷徹な現状分析、即ち冷徹な数字に基づき国家国民のために将来計画を立てる事である。その意味では6月13日の亀井氏の「今後の絵を描き切れていないのに周りがゴタゴタと言い、民主党は党の体をなしていない。いろいろな人が勝手な話をし過ぎている」との苦言は実に的を射た発言である。特にマスメディアで発言し踊る関係者、政治化、識者には品性が、沈黙する庶民には知恵と決意が必要である。

因みに戦後政治家の中で高い評価を受けている所得倍増論の池田勇人。「貧乏人は麦飯を喰え」等発言し野党の攻撃を受け、マスメディアでも糾弾された事の多い政治家であったが数字に通じていた。その池田勇人は大蔵官僚上がり。政治の天才と言われ高等教育を受ける事無く裸一貫政治の世界を駆け上がったとされる田中角栄。その政界入り前の経歴は池田勇人と対極をなす人物であるがやはり数字に通じていた。コンピューター付ブルドーザーと例えられていた。両政治家への評価は読者の判断に任せるとして、何れも大変数字に通じ国家財政にも通じた政治家であった。この点において世襲議員、小沢ガールズを問わず現在表舞台に立つ政治家とは大いに異なっている。(佐々木 賢治筆)

補足:土地を必要としない農業は上記分析の例外であるので注意されたい。具体的に云えば養鶏である。その飼料の多くを海外からの輸入飼料に依存しており、養鶏に占める土地代は限られているからである。
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