2013.04.10

130409-SIA評論:北朝鮮問題の回答と現状認識
SIA評論バックナンバー参考:2010年12月18日号
「2011-2020年の世界と日本:明日の指針と展望」


お早うございます。SIAの佐々木です。先週後半より北朝鮮問題について多々問合せを戴きましたので、2年4ヶ月前のSIA評論2010年12月18日号「2011-2020年の世界と日本:明日への指針と展望」を回答を兼ね関係者に送りましたので、一般公開し貴方にも送ります。その前に「北朝鮮の悲劇と現状」です。


ジョージ・オーエル アニマルファーム

ジョージ・オーエル アニマルファーム

130409-SIA評論「北朝鮮の悲劇と現状」
北朝鮮の現状を一言で言えば、「三代目の幼子がダダを捏ね、国を滅亡に導く危ない火遊びをしているが、その国内では吾身可愛さに誰も諫言する人がいない」といった亡国の事態です。

第二次世界大戦前の日本や、米ソ冷戦時代にソ連が現在の北朝鮮と同様な発言を発していれば、直ちに戦争状態となったと思われる。1950、60年代に中国は現在の北朝鮮と類似した発言を繰り返していたが、今の北朝鮮同様取るに足らない存在であったので、米国を初めとする西側諸国は比較的寛容であった。

現在の北朝鮮の常軌を逸した発言が通用するのも北朝鮮の弱さの故である。しかしこの事態が継続し、更にエスカレートしてくると世界世論の動向によっては、米国を中心とする西側諸国が軍事的制裁行為に踏み切ったとしても容認する雰囲気が生れる可能性はある。この事態を予見するだけの知性が北朝鮮の指導部に無いとは思わない。しかし、この事を指摘諫言する愛国心ある人物がいない所に現在の北朝鮮の悲劇がある。

金正恩が表舞台に登場した時、彼の写真とジョージ・オーエルのアニマルファームの挿絵の余りもの類似性に吾が目を疑ったものである。因みにこの本は佐々木インターナショナルアカデミー英語教材である。金正恩の絵姿は金日成に似せたといわれている。金正日も金正恩のこういった売り出しに策を練った一人のはずであるが、アニマルファームの挿絵が金正恩と瓜二つとは思いもよらなかったものと思われる。歴史とは独裁者にとって実に残酷であり、皮肉な物である。

以下、SIA評論2010年12月18日号「2011-2020年の世界と日本:明日への指針と展望」です。その中の「北朝鮮核問題:なぜ、北朝鮮は核武装に固執するか? その理由と可能な防止策はあるか?」をご覧下さい。


101218-SIA評論「2011-2020年の世界と日本:明日への指針と展望」
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21世紀に入り、早くも10年が経過した。この10年、21世紀はアジアの世紀である事を証明した10年であった。アジア諸国、特にアジアの人口大国中国、インド、インドネシアの存在感が強まった10年であった。

近代産業革命:規模の経済(Economies of scale)が推進したアジアの植民地化と成長
近代産業革命以降、交通輸送革命、通信革命により世界経済の一体化は革命的に進んでいる。先月号では、こういった認識、歴史観に基づき「イギリス産業革命時代(1760年代-1830年代)のイギリスと日本の高度経済成長期(1955年-1973年)の繁栄と照らし合わせ、その歴史から学ぶ時、明日へのヒントが見えて来ると思ってる。必要な事は、新しい視点と洞察力と新たな挑戦を行う勇気と行動力である。」と述べた。イギリス産業革命時代(1760年代-1830年代)、日本の高度経済成長期(1955年-1973年)を支え、歴史を動かして来た大きな要因は単に生産現場(工場)での産業革命だけでは無い。低価格で大量生産された物資を低コストで大量に運ぶ事を可能にした鉄道網拡大、鉄鋼製大型輸送船、更には自動車の普及と道路網の充実によってもたらされた輸送革命であり、又19世紀に生れ20世紀に全世界に普及し花開いた電信電話通信革命であった。

この事により当初は単なる生産現場での大量生産、低コスト生産に過ぎなかった規模の経済(Economies of scale)が全世界を飲み込み始めたのである。当初、先行者利潤を欲しいままにした欧米先進国諸国は、近代産業革命がもたらした富国強兵政策により、アジア、アフリカ、南北アメリカ大陸を軍事力で席巻し、世界に多くの植民地国を作り上げた。その、基本的メカニズムは資本主義社会の持つ競争原理、及びその競争を促進しかつ競争の結果更に強化された規模の経済(Economies of scale)であった。一言説明を加えれば規模の経済(Economies of scale)とは大規模生産の持つ経済性であり、規模を拡大する事による生産性の上昇、コスト低減を表す言葉である。

この究極の規模の経済(Economies of scale)、大規模生産の持つ経済性がこれまで約3世紀に渡り虐げられて来た世界の人口密集地、アジア諸国、特に中国、インド、インドネシアの存在感を高めているのは歴史の皮肉である。面白い事にこの三国は共に人口大国(国際連合の「世界の人口推計(2008年度版)」の推計に基づくと2009年推定で中国は人口13億53百万で第一位、インドは11億98百万で第二位、米国が3億15百万で第三位、第四位は2億30百万のインドネシアである。)であり、アジア中央部に位置している点で類似している。しかし、お互いの社会制度、経済システム、宗教は大きく異なり、躍動する混沌の中にある21世紀初頭のアジアを象徴している。注目すべきは、現在世界の注目を集めているこの三国が上記の点で相互に相違するだけでなく、それぞれその周辺諸国とも宗教的、文化的には大きく異なっている点である。

これまで、アジアの東端にあり、欧米植民地主義の拡大、欧米優位の文化意識にアジア最後の礎となって来た19世紀半ば以来の日本の歴史的役割は既に終焉したといっても良い。これがアジア、世界、日本の2010年末、2010年代初頭の時代風景である。この歴史認識に従い、今後数回に渡り分析を進めて行く予定であるが、先ずは愁眉の急を告げているかに見える問題点を指摘するに留める。

その問題とは北朝鮮の核、中国の民主化、両国の政治体制問題である。

北朝鮮核問題:なぜ、北朝鮮は核武装に固執するか? その理由と可能な防止策はあるか?

北朝鮮の核武装は対米カードと見られているが、私の見解は異なる。もう一つの大きな要因があり、その要因とは北朝鮮の金日成、金正日、金正恩と継承を目指す金王朝存続を掛けた対韓政策である。韓国の工業化、経済成長により北朝鮮は軍事的にも、もはや韓国に対抗できないだけでなく北朝鮮の民心も離れつつある。北朝鮮民心の乖離に対する金王朝の方策は現在手詰まりであり、このため独裁王朝維持の唯一の政策は対韓軍事対立の維持である。しかし軍事的対立の維持ももはや通常兵器による正規軍どうしの戦いでは勝利は覚束ない。この事は軍国主義国家であるだけに北朝鮮は痛切に自覚している。軍事的に残された唯一の対応策は核とゲリラ戦術である。金政権維持を究極目標として考えてみれば南北朝鮮対立により失うものの少ない北朝鮮、片や現在の繁栄を失いたくはない韓国国民。こういった状況の中にある両国。韓国にとっては中国の市場は失いたくはなく、又1950年に勃発した朝鮮戦争(1950年6月25日 - 1953年7月27日休戦))に加担した隣国中国の軍事的脅威。その存在感を韓国は意識せざるを得ない。しかし、経済、軍事両面で劣勢にある北朝鮮の世襲金王朝にとっては北朝鮮の核武装化は存続をかけた要件となる。

北朝鮮の核政策を放棄させる事は、現在の六カ国方式では不可能である。米国の直接交渉も実を結ぶとは言えない。現在、アフガニスタンに兵力を取られている米国。1990年代以来の米国軍事力の現実と、米国軍事戦略思想から見ても二正面作戦は推進しない事を北朝鮮政府は賢くも熟知している。こういった環境の中、頼みとされている中国も原状では影響力を行使するとは信じ難い。米中共に自国の安全保障上の問題、更には政治的犠牲を冒してまでの対策は取らないからである。こういった状況がクリントン政権以来約20年、北朝鮮核問題が未だに解決しない理由である。日本にはこの状況を打ち破る可能性のある方策が唯一可ある。日本の北朝鮮核開発防止策とは、日本は唯一の被爆国であるだけでなく、世界三大核大国(米、露、中)に国境を接し囲まれている唯一の国である現実に立脚すれば自ずから明らかとなる。

日本が世界に向け「北朝鮮の核武装の暁には日本も核武装する」と明言することである。「北朝鮮が核武装し、核弾頭を搭載したロケット技術を開発する前兆が見えた暁には、日本国民の安全確保のため日本は核武装を余儀なくされる。」と世界に断言し、その準備を進めることである。戦略上からも、またアジア、世界における覇権を目指す立場からも日本の核武装を一番恐れているのは中国である。このため中国の北朝鮮政策は劇的な変化を生むと私は見ている。北朝鮮が核武装し、核戦略を確立した暁には(既に確立されているとの見方も多いが)、仏の顔も三度までとの格言、庶民の知恵の産物通り、核武装すべきである。何ら対策を練る事なく60有余年を経て三度目の核被爆を被る事態が生まれたとしたならば、その時点で日本の政治指導者の不作為責任を追求しても時すでに遅しである。仏の顔も三度までとは、庶民の知恵である。その真意は「三度も同じ被害に会う人は、仏ではなく愚か者」の意味である。最後に北朝鮮の隣国、宗主国とも言える中国に触れる。

中国の将来と民主化:中国の民主化と中国連邦の崩壊
1949年10月中国の共産政権樹立から60年を経た今、変わりつつあるのが中国内部である。政治的な変化が内向し、ある変化が生まれつつあると見ている。前例がある。ソビエトである。ソビエト社会主義共和国連邦は、1922年に世界初の社会主義国として成立し、1991年に解体された連邦国家であるが、今の中国は単に共産主義独裁国家と言うだけでなく、チベット、内モンゴルといった本来中国とは言えない地域までをも中国と称する建前上の連邦国家である点も類似している。ロシアで共産政権が成立したの1917年。その崩壊に74年を要した。ソ連の崩壊をもたらした同様な要因が中国でも生まれており、同様な動きが中国でも進みつつある。2020年代半ばに中国の崩壊が訪れると見るのはアナガチ暴論ではなく、社会科学的な見地からも生まれてくる予見である。問題はこういった事態が生まれるか否かではなく、いつ起こるかである。問題はそれが早まるか、遅れるか、どう推移するかである。

こういった20年先を予見しつつ、世界を見通し、アジアを考え、日本の進むべき道を考える事が、現在に生きる私達に科せられた義務であると私は見ている。その際参考になるのが、前月号で触れた様に「日本を支え、押し上げて来た1950、60、70年代の高度成長期の成功要因と過去の栄光を一度見直し、過去50年、60年の時代の変化、世界各国との相対的関係を直視し、21世紀2010年現在の状況を正しく把握し、将来を見据える」事であり、それに基づき新しい取り組みを始める事である。それが日本のアジア、並びに世界への貢献であり、21世紀の道を開く事にもつながると確信している。

まさにこの10年、20年は狂瀾怒涛の時代となる可能性を秘めている。その潮目を読み果敢に対処することが日本社会としても、企業も、また個人としてもこれまで日本を我々に引き継いでこられた先達に報い、将来世代に引き継ぐ立場にある我々の責任である。以下次号。(佐々木賢治)
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