2014.04.03

SIA評論2014年4月2日号を公開します。SIA評論は年間購読者にSIAがインターネット配信している評論誌です。年間購読料は6,480円(税込)です。講読ご希望の方は連絡下さい。


3月24日日経新聞夕刊社会面の広告の一部

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140402-SIA評論公開版:Nature誌小保方論文の行方
2014年4月2日


スタップ細胞を巡るこの2ヶ月の大騒ぎ。いろいろと考えさせる問題を含んでいる。いつものことであるが、当初のマスコミの大騒ぎと一転した批判。

私共SIAは大学、研究機関関係者の海外学術誌に掲載を目指す論文の英訳を既に20年間担当して来ている。このため一般の方々やマスコミ関係者よりも身近な問題として今回の問題を考えている。

私共の翻訳方針として日本語からの翻訳依頼の場合は日本文に忠実に解り易くキレの良い正確な英語に仕上げる様各担当者(原文翻訳者、ネイティブエディター、最終確認者)に指示し心掛けさせている。又、英文校正依頼の場合はネイティブ校正者が理解できる英語しか受付けず、英語として解り易く明快な英語に修正させるに留めさせている。論文投稿規程に従ったフォーマットの変更も有料で対応しているが、善意による物であれ辻褄を合わせるための論旨の変更は禁止させている。裏を返せば悪文は翻訳後も悪文となる。論文とは著者が書くべきものであるあるので当然の対応であり、プロフェッショナルな翻訳業者として守るべき職業倫理である。さて今回の論文に戻る。

時代を画するような斬新な論文とは本来、専門外の人間が読んでもその論理性が理解できる物で無ければならないと私は実感している。そもそも旧来の固定観念を破る独創的理論、論文は旧来からの固定観念のゆえに専門家には理解不可能な事が多い。逆に、論理的思考力さえあれば固定観念の無い専門外の人(素人)の方が理解し易い事が多いものである。

もっと解り易くいえば、独創的論文を発表し世に認めさせるためには、論理的思考力と忍耐心を兼ね備えた門外漢に理解出来る様に解り易く説得力のある資料と文章を準備する必要がある。

今回のSTAP (Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency) 論文騒動は議論の中心が、いつしかこの生命現象(刺激による細胞の初期化)の存在の有無よりも、別次元に移ってしまっている点が実に気になる。この論文の個々の問題点については、旧来の識者が指摘する様に不可思議な点は多々ある。しかし、私には将来の科学の進歩、生命観から見る時、それ以上の重要性をこの論文は提示し、示唆していると思う。

実は私共は既にこの論文を入手しSIA関係者にも読むよう勧めている。それだけに、多くの落ち度が小保方氏にある事は認めるとしても、これまでの生物学の常識を打ち破る荒唐無稽な話を捏造したとは、現時点で今一つ信じ難い。この現象の重要性を考えると、先ずはこの現象、そのものの解明、存在の有無、更にはそのメカニズムにもっと議論と努力が傾注されるべきであると思う。

マスメディアは週刊文春を初め面白おかしく痴話話の様に取り上げ批判している。朝日新聞、地元中日新聞を初めとする新聞やテレビメディアも似たり寄ったりである。それで紙面を埋め、販売部数を伸ばし、視聴率を上げるだけでは日本のマスコミも余りに情けない。そういった程度の報道を鵜呑みにする読者、視聴者は自業自得かも知れないが、そういった社会は悲惨である。

今回の騒ぎを大きくしている原因の一つは「多数の人を雇用しているマスメディアに各分野の専門家が余りに少ない事」にあるのは間違いない。この問題に限らず、マスコミ、マスコミ人は「所詮、初期化された未分化の集団に過ぎず、専門知識が不足するがゆえに時々の風潮に飛び付き風評被害を拡大している存在に過ぎない」としたら悲しい話である。今回の問題はやがて時間と科学の進歩がその是非を証明する事になるので、一時的な高が知れた問題であるかもしれない。しかし、戦前の報道姿勢と一変した戦後の報道、日本国や社会の名誉が絡む問題のこれまでの各種誤報の賠償は一体誰が行なうのか、甚だ心許ない話である。
(140402-SIA評論 佐々木賢治)
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